■ 治るかどうかよりも、重視される『感情的価値』
● 前回のポイントは・・・
『相手の興味のある話』にするために有効なのは、
「●●さんの場合は・・・」という話し方をすることで、
『一般論』でなく、『その人個人のための話』にすること。
そのためにも、しっかりとした基礎知識を身につけたい。
・・・ということでした。
● そして、今回のポイントは・・・
「治すことにこだわり過ぎると、おかしくなりがち。
もっと大切なことは、『感情的な価値』の提供」
ということです。
それを再認識させられたエピソードを、お伝えしましょう-
■ トメさんの首
● この前、65歳の女性の患者さん、トメさん(仮名)が来ました。
本人の主訴は、『腰痛』と『座骨神経痛』です。
● 「病院ではヘルニアと脊柱管狭窄症と言われ、色んな
整体や電気治療、ブロック注射、カイロプラクティックなどを
試しましたが、ちっともよくなりません。先生がたも
付き合っていくしかない症状だね、と言うばかりで・・・
でも、諦められなくて・・・(涙)」という状況。
● こういうケースは、本当によくあります。診ると、確かに
腰椎に詰まりがあり、左側(ヘルニア側)の背骨沿い(一側)に
強めの緊張があります。
● ただ、ポイントとして、『全身に強い緊張癖』がありました。
軽くふれるぐらいでも、ググッと力が入り、守ろうとしてしまいます。
(こういうケース、けっこうよくありますよね。)
● まず、施術としては、緊張をとっていきます。
話をよくきき、背骨をゆるめた時点で、緊張が半分ぐらいに。
特にハリのつよいお尻、ハム(腿裏)、膝裏をゆるめて、
逆に弱すぎる腰部外側、側腹(よこっぱら)を強化。
これで、ずいぶん全体のバランスは整いました。
● それで仰向けになりましたが、表情がまだ冴えません。
「痛みは大分減ったんですけど・・・」とのこと。
カラダの緊張癖も残っています。
(こういうケースも、よくあります)
※ ちなみに、痛みが減っても表情や機嫌がよくならない場合は
ほとんど、心理的な問題(主にメンタル・ブロック)があります。
■何が、決定的に調子を変えたか?
● これは、「カラダはよくなっても、カラダが納得していない」
という状況なんです。これでは実は、施術は片手落ちです。
● そこからはもう、検査とトークばかりしました。
「沿ったり、足を上げたり、ひねったり、叩いたり」いろいろと
『ヘルニアや脊柱管狭窄症の検査』があるのですが、
それらをすべて、解説つきでやりました。
● その結果、
「今、施術前より症状が明らかに軽い実感があることからも、
検査の結果からも、トメさんの腰痛や座骨神経痛は、
ヘルニアや脊柱管狭窄症によるものではないですね」と
確認し、詳しく話し、納得してもらいました。
● そうすると・・・
「先生、私は今日、救われた思いです。実は・・・私には、
ヘルニアや脊柱管狭窄症は一生治らず、しかもどんどん悪化して
やがて歩けなくなる、というイメージがあって、本当に
怖かったんです。これで希望が持てました」
といって、涙ぐんでいらっしゃいます。
● そして、面白いことに、カラダの緊張癖が半分以下に。
● じいちゃん&ばあちゃんっ子度合いが激烈な僕としては、
こういうときすぐ込み上げまくって大変なんですが(笑)、
そこは鉄の自制心でこらえつつ、話を続けました。
■無視できない、説明の影響力
● 結果、施術前の痛みを10とすると、
施術後の痛みは6、お話後の痛みは2になり、本当に
嬉しそうに次回の予約をとり、
「先生、私、我慢していたんだけど、ダンスを
再会してもいいですか?いいですよね?」と言って、
少女のような顔で帰っていかれました。
● 話し方、歩き方が全然違ったものになりました。
『カラダの状態』だけでなく、『心の状態』が変わったからです。
こういうのは何も、珍しいケースではありません。
患者さんはもちろん、
『カラダを治したい』とは思っています。
でも、それと同じぐらい・・・というより、
実はそれよりも大切なことは、『心の変化』です。
永井がよくいう、『安心・納得・希望』です。
これがあると、回復のスピードや深度は、
まったく違ったレベルのものになります。
■患者さんはそもそも、何のために来ているのか?
なぜかというと、患者さんは、
「痛いから来ている」というより、もっと正確に言えば、
「痛いことで『心が不安だから』来ている」とか、
「痛いことで『心が辛いから』来ている」ということなんです。
イメージできますか?
こういうケース、本当に多いです。
(病院でも整体でも、名医・達人と呼ばれるひとは、
こういうところが本当に強いです)
逆に言うと、
症状がそれほどは改善した実感がなくても、
「変化自体はゆっくりしていて当たり前で、その理由は
こういう原因だからで、でも原因はちゃんと減っていて、
その証拠は検査でも変化として出ていて、
回復していく見通しはちゃんと立つし、
実例にもたとえばこういう人がいますよ。
こういうセルフケアなんて、オススメです」
・・・というように、安心・納得・希望が
きちんと提供できれば、患者さんは満足できます。
そして、『心の力』が強い追い風となったスピードで、
回復が起こっていきます。
(また、これができないと回復しない神経系の症状が
かなり増えています。間違いなく今後、もっと増えていきます)
ここに、注目しましょう。
もちろん、施術の技術も大切です。
でもそれは、『当たり前』です。そこを見落とす人は
あまりいません。
だからこそ、施術やその結果ばかりに注目してしまい、
すっぽり見落としがちな、『感情的価値』の提供。
この重要性を、改めて、胸に刻んでおきましょう。
今後、ますます重要になっていくのは、
間違いないですから。
【 今回のポイント 】・・・・・
本当の回復は、『患者さんの心の健康度』が変わったときに
起こる。『カラダの健康度』をあげるのはもちろん、
『感情の変化』のきっかけを提供することで、
『心の健康度』をあげられるセラピストを目指すべし。
それが、今後ますます求められる、セラピストの必須スキルである。
【 次回予告 】・・・・・
次回は、ちょっとバリで受けた刺激によって、
内容を考えます(笑)