原因自分説。
流行りましたし、また流行ってきてますね。
「変わるべきは自分!」
「過去と他人は変えられないけど、自分は変えられる!」
「自分はあのとき、どうすべきだったのか?」
美しいし、正しい。
でもね、有効じゃないときも、あるんです。
悲しいほど。
● 1回の施術で、そんなに改善を実感してもらえない
患者さんがいます。
また、何回か通ってもらっても、喜んでくださってない
ように見える患者さんもいます。
皆さんも経験、あると思います。
(僕だってあります。昔はよく悩んだし、
今だってゼロじゃない。悩まなくはなったけど)
● そのときあなたは、どう考えますか?
どう感じますか?
● 原因自分説を使い過ぎる人は、こう考えます。
「自分の腕が未熟なんだ」
「申し訳ない」
「もっと勉強しなきゃ、練習しなきゃ・・・」
って。
それが、間違いのもとなんです。
● 原因自分説は、
美しすぎて、何にでも当てはめたくなります。
努力家で正直で優しい人は特に、これに溺れます。
なぜか、うちの生徒さんには、
そういう人が異様に多いです。心配です。
あなたは、大丈夫ですか?
● 原因自分説は何にでも当てはまり過ぎて、
本当の原因を見えなくしてしまうことがあります。
「運が悪いんだ、わたし」と似てます。
何でもそのせいにしてはいけません。
そういう考え方自体が、運を手放すものです。
フジモンの「顔デカいからや!」も同じです。
何でもこのツッコミで対応してはいけません。
対応力がやがて衰えてしまいます。
実は、「私が悪いんだ、力不足なんだ」も同じです。
別に原因があるかもしれません。
この発想では、工夫する範囲を狭くしてしまいます。
● わかりますか?
「何にでも当てはまりそうな原因」というのは、
実は、『解決しやすいサイズではないことが多い』んです。
「じゃあどうやったら運がよくなんの?」
と言われたら、確実な方法なんて、誰も知らないんです。
(だから、変な商売が流行るわけですね(涙))
「じゃあ、いつ、未熟じゃなくなるの?」
って話です。それは場合によっては、
『未熟でもできるはずの改善』をサボることに
つながるんです。厳しく言っちゃえば、ですけどね。
だって、下手クソでもできることって、
いっぱいありますからね。
● 話を元に戻して・・・
なかなか良くならない患者さんがいます。
その本当の原因って、何でしょうか?
● ぜひ、把握しておきましょう。
たとえば、すぐ思いつくだけでも、こんなにたくさんの
可能性があります。
(例):
▼ 本当は良くなっているが、わかってない(わからせられてない)
▼ 良くなっているが、表現が苦手で嬉しそうに見えない
▼ 良くなっているが、まだ残ってる悪い部分を伝えるべきだと思っている
▼ 良くなっているが、理想がものすごく高いので、
そこに追いついてないだけ
▼ そもそもケガ(捻挫や肉離れ)があるため、時間的に
長い目で見るべき症状なだけ
▼ 心配してもらいたいのもあり、悪い目に言う
(ちゃんとした施術をしてもらうためには、多少重めに
言ったほうがいいと思ってる人がいます。
さまぁ~ずの大竹さんのように(笑))
▼ 悪いところがないのに来るのは後ろめたくて症状を言う
▼ 生活習慣や仕事週間がハード過ぎて、良くはなっていたのに
すぐに疲労が蓄積しているだけ
▼ 『思い込み痛』(心理的な問題)があるために、
よくなっていることを実感できない状態
▼ 『邪気』があるために、回復を実感できない状態
などなど。
● 今あげたのはほんの一例ですが、
どれも、「施術者側のせい」とは言い切れないものです。
少なくとも、「施術者のせい」にしていたら、
いつまでたっても改善できないことになります。
そして、それぞれ、大切なことですよね?
無視しちゃいけない、大事な情報が含まれています。
● こういった可能性に目を向けずに、
「悪いのは自分の技術なんだ・・・未熟なんだ・・・」と
自分ばかり責めていたら、どうでしょう?
本当の実力は、身につきませんよね。
(本当の)原因を追及する力と、(本当の)原因を改善する力。
それこそ、本当の実力です。(たぶん、あらゆる仕事で)
何より、患者さんが『置いてけぼり』になります。
いつまでも健康に戻れません。
施術者が、美しい幻想に溺れてしまったがために、です。
それじゃあ、ダメですよね。
「いやいや、先生の技術がどうとか言ってんじゃなくてさ、
どうやったら良くなれるか、教えてもらえたら
それでいいんだけどね」
って、患者さんは思うでしょう。
(人を責めたい人なんて、滅多にいません。よほど
健全じゃない状態じゃない限り、基本は味方です)
● だから、やぶからスティックに
原因自分説を振り回してはいけません。(懐)
そもそも、『誰が悪いか?』という質問が良くないんです。
すごく視野を狭くする問いです。
そうじゃなくて、
『どの部分がうまく機能しなかったか?してないのか?』
という問いが効果的だと思います。
具体的に、分解していくことです。
● たとえば、なかなか良くならない、という風に
見える人に、聞いてみたらいいんです。
「施術直後は、ラクな感じ、ありましたか?」
・・・あったかもしれません。
そしたら、少なくとも短期的には、有効だったんです。
「そしたら施術後、何日ぐらいで痛みが再発しましたか?」
・・・2週間後ぐらいかもしれません。それが
予定より短いなら、生活習慣を調べていくべきです。
4月だし、飲み会が多かったかもしれない。
そしたら、原因はお酒や食べ過ぎかもしれない。
氣の遣いすぎかもしれない。つまり、『生活原因』ですね。
また、もしその2週間が予定通りなら、順調ですよね。
説明が必要なだけです。「●●さんの体調から行くと、
2週間ぐらいもてばちゃんとキープできてるほうですね」って。
「もっと長持ちさせるには・・・」って話をしたらいい。
どっちのケースにしても、「施術者のせい」ではないし、
何の問題もない話です。
● また、もっと具体的に聞くこともできますよね。
「一番ひどかったときを10とすると、今は何ぐらいですか?」
・・・場合によっては、「5」とか言います。
良くなっとるやんけ!とツッコミたくなりますが、
「まだ残ってる」ほうが氣になる方は、「まだ良くなってない」
という言い方をするんです。悪気なんて一切ない。
でも、2週間たった時点で半分を保ててたら、
意味ある効果は充分出てる、って言えるかもしれない。
● こんな風に、
ちゃんと『実情』を知ろうと思えば、
予想とは違う実態が見えてくるんです。
自分が怖いと思うような結果、望み通りじゃない結果が
出たときほど大事です。
この、『実情の確認』が。
悪いことが起きたら、目を背けたら、もっと危ない。
当たり前です。
車の運転でかんがえたら、よくわかりますよね。
前方に子どもが見えたら、「やばいかも!」って言って
目を閉じたりしないですよね?
でも、人生や仕事では、よくあることなんです。
悪いことが起きたと思ったときこそ、視野を広くとろうと
頑張って、調べて、実情をよく見たらいいんです。
子どもの位置をよく見て、ブレーキ踏みながら
ハンドルきったらいいんです。
そのほうが、絶対に安全です。
心だって、クヨクヨ怖がってるより、よほど落ち着きます。
● 「それは、あなたのせいではない」。
何かが、予定通り機能しかなっただけです。
だから、
『誰が悪い?』でなく、『どこに問題があった?』って
何かを責めるでなく、ちゃんと見ていきましょう。
自分を責めてる間は、自分ばっかり見ています。
見るべきは、患者さんであり、問題のほうですよね。
● まじめな人ほど陥りやすいワナとして、
ぜひ、心に留めておいて下さい。
他人を責めちゃいけないのと同じぐらい、
自分を責めちゃいけないんです。
【 今回のポイント 】-------------------------
何でも自分のせいにする『原因自分説』は美しいが、
そればかりに溺れてしまうと、周りが見えなくなり、
相手も見えなくなり、本当の原因を見過ごしてしまう。
なかなか良くならない患者さんがいたときにも、
原因は20通りも30通りもある。それを個別に
見ていかないと、本当の改善はない。
安易に自分の未熟さのせいにしていたら、
真の問題を解決する力は身につかない。
『誰が悪い』でなく『どこに問題があったのか?』
『何が機能していないのか?』という問いを使って、
常に真の原因を探りつづけたい。
※ ただし、『原因他人説』のひともたくさんいるので、
それよりは、『原因自分説』のほうがよほどマシなのは
間違いないと思います。
でもまぁ、
「どっちも偏りがちよ、バランスが崩れがちよ」
という話ですね。
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■編集後記:
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僕らが・・・
すごく気になったり、
心配したり、
イライラしたり、
怖かったり、
ムキになって言い訳したくなったり、
相手を言い負かせたくなったり、
場合によっては傷つけたくなったり。
そういうときは、
『僕ら自身の心にある地雷』が反応しています。
その人に問題があるというよりは、
自分の中に、問題があるんです。
それに似ているから、
ハラハラします。過剰に反応します。
その人は全然悪くなかったりします。
悪気なんて全然なかったりします。
会話でよく起こることです。
そして、
ストレスの半分以上は、
そんな『カン違いには見えない、大きなカン違い』が原因です。
怖いよね。